こうの山道から降りて来る一人の修行者にもあった。珠数《じゅず》を首にかけ、手に杖《つえ》をつき見るからに荒々しい姿だ。肉体を苦しめられるだけ苦しめているような人の相貌《そうぼう》だ。どこの岩窟《がんくつ》の間から出て来たか、雪のある山腹の方からでも降りて来たかというふうで、山にはこんな人が生きているのかということが、半蔵を驚かした。
間もなく半蔵らは、十六階もしくは二十階ずつから成る二町ほどの長い石段にかかった。見上げるように高い岩壁を背後《うしろ》にして、里宮の社殿がその上に建てられてある。黒々とした残雪の見られる谷間の傾斜と、小暗《おぐら》い杉《すぎ》や檜《ひのき》の木立《こだ》ちとにとりまかれたその一区域こそ、半蔵が父の病を祷《いの》るためにやって来たところだ。先師の遺著の題目そのままともいうべきところだ。文字どおりの「静《しず》の岩屋《いわや》」だ。
とうとう、半蔵は本殿の奥の霊廟《れいびょう》の前にひざまずき、かねて用意して来た自作の陳情|祈祷《きとう》の歌をささげることができた。他の無言な参籠者《さんろうしゃ》の間に身を置いて、社殿の片すみに、そこに置いてある円《ま
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