をしないでくれたまえよ。」
勝重はうなずいた。
神前へのお初穂《はつほ》、供米《くまい》、その他、着がえの清潔な行衣《ぎょうい》なぞを持って、半蔵は勝重と一緒に里宮の方へ歩いた。
梅の咲く禰宜《ねぎ》の家から社殿までの間は坂になった細道で、王滝口よりする御嶽参道に続いている。その細道を踏んで行くだけでも、ひとりでに参詣者の心の澄むようなところだ。山中の朝は、空に浮かぶ雲の色までだんだん白く光って来て、すがすがしい。坂道を登るにつれて、霞《かす》み渡った大きな谷間が二人《ふたり》の目の下にあるようになった。
「お師匠さま、雉子《きじ》が鳴いていますよ。」
「あの覚明《かくみょう》行者や普寛《ふかん》行者なぞが登ったころには、どんなだったろうね。わたしはあの行者たちが最初の登山をした人たちかとばかり思っていた。ここの禰宜さまの話で見ると、そうじゃないんだね。講中《こうじゅう》というものを組織して、この山へ導いて来たのがあの人たちなんだね。」
二人は話し話し登った。新しい石の大鳥居で、その前年(文久二年)に尾州公《びしゅうこう》から寄進になったというものの前まで行くと、半蔵らは向
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