と金兵衛は言葉をつづける。「あの公家衆の御通行には、差し引き、四両二分三朱、村方の損になったというじゃありませんか。」
「とにかく、御通行はもっと簡略にしたい。」とまた半蔵は言った。「いずれこんな改革は道中奉行へ相談のあったことでしょう。街道がどういうことになって行くか、そこまではわたしにも言えませんがね。しかし上から見ても下から見ても、参覲交代のような儀式ばった御通行がそういつまで保存のできるものでもないでしょう。繁文縟礼《はんぶんじょくれい》を省こう、その費用をもっと有益な事に充《あ》てよう、なるべく人民の負担をも軽くしよう――それがこの改革の御趣意じゃありませんかね。」
「金兵衛さん、君はこの改革をどう思います。今まで江戸の方に人質のようになっていた諸大名の奥方や若様が、お国もとへお帰りになると言いますぜ。」
 と吉左衛門が言うと、旧《ふる》い友だちも首をひねって、
「さあ、わたしにはわかりません。――ただ、驚きます。」


 その時になって見ると、江戸から報じて来る文久年度の改革には、ある悲壮な意志の歴然と動きはじめたものがあった。参覲交代のような幕府にとって最も重大な政策が惜
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