、中新田《なかしんでん》へ杉苗《すぎなえ》四百本、青野へ杉苗百本の植え付けなぞを思い立つ人だ。
「お玉、お風呂《ふろ》を見てあげな。」
 という金兵衛の声を聞いて、半蔵は薄暗い湯どのの方へ父を誘った。病後の吉左衛門にとって長湯は大の禁物だった。半蔵は自分でも丸はだかになって、手ばしこく父の背中を流した。その不自由な手を洗い、衰えた足をも洗った。
「お父《とっ》さん、湯ざめがするといけませんよ、またこないだのようなことがあると、大変ですよ。」
 病後の父をいたわる半蔵の心づかいも一通りではなかった。
 間もなく上の伏見屋の店座敷では、山家風な行燈《あんどん》を置いたところに主客のものが集まって、夜咄《よばなし》にくつろいだ。
「金兵衛さん、わたしも命拾いをしましたよ。」と吉左衛門は言った。「ひところは、これで明日《あした》もあるかと思いましてね、枕《まくら》についたことがよくありましたよ。」
「そう言えば、あの和宮《かずのみや》さまの御通行の時分から弱っていらしった。」と金兵衛も茶なぞを勧めながら答える。「吉左衛門さんはあんなに無理をなすって、あとでお弱りにならなければいいがって、お玉と
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