《ひとり》動いたあとは不思議なもので、御年も若く繊弱《かよわ》い宮様のような女性でありながらも、ことに宮中の奥深く育てられた金枝玉葉《きんしぎょくよう》の御身で、上方《かみがた》とは全く風俗を異にし習慣を異にする関東の武家へ御降嫁されたあとには、多くの人心を動かすものが残った。遠く江戸城の方には、御母として仕うべき天璋院《てんしょういん》も待っていた。十一月十五日には宮様はすでに江戸に到着されたはずである。あの薩摩《さつま》生まれの剛気で男まさりな天璋院にもすでに御対面せられたはずである。これはまれに見る御運命の激しさだとして、憐《あわれ》みまいらせるものがある。その犠牲的な御心の女らしさを感ずるものもある。二十五日の木曾街道の御長旅は、徳川家のために計る老中|安藤対馬《あんどうつしま》らの政略を助けたというよりも、むしろ皇室をあらわす方に役立った。
 長いこと武家に圧せられて来た皇室が衰微のうちにも絶えることなく、また回復の機運に向かって来た。この島国の位置が位置で、たとい内には戦乱争闘の憂いの多い時代があったにもせよ、外に向かって事を構える場合の割合に少なかった東洋の端に存在したこ
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