(十四代将軍、徳川|家茂《いえもち》)への引き出物として、容易ならぬ土産《みやげ》を持参せらるることになった。「蛮夷《ばんい》を防ぐことを堅く約束せよ」との聖旨がそれだ。幕府としては、今日は兵力を動かすべき時機ではないが、今後七、八年ないし十年の後を期し、武備の充実する日を待って、条約を引き戻《もど》すか、征伐するか、いずれかを選んで叡慮《えいりょ》を安んずるであろうという意味のことが、あらかじめ奉答してあった。
しかし、このまれな御結婚には多くの反対者を生じた。それらの人たちによると、幕府に攘夷《じょうい》の意志のあろうとは思われない。その意志がなくて蛮夷の防禦《ぼうぎょ》を誓い、国内人心の一致を説くのは、これ人を欺き自らをも欺くものだというのである。宮様の御降嫁は、公武の結婚というよりも、むしろ幕府が政略のためにする結婚だというのである。幕府が公武合体の態度を示すために、帝に供御《くご》の資を献じ、親王や公卿《くげ》に贈金したことも、かえって反対者の心を刺激した。
「欺瞞《ぎまん》だ。欺瞞だ。」
この声は、どんな形になって、どんなところに飛び出すかもしれなかった。西は大津《おお
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