領となっている土地も広大なものだ。そこに住む出家、比丘尼《びくに》、だいこく、所化《しょけ》、男色の美少年、その他|青侍《あおざむらい》にいたるまで、田畑を耕すこともなくて上白《じょうはく》の飯を食い、糸を採り機《はた》を織ることもなくてよい衣裳《いしょう》を着る。諸国の百姓がどんなに困窮しても、寺納を減らして貧民を救おうと思う和尚《おしょう》はない。凶年なぞには別して多く米銭を集めて寺を富まそうとする。百姓に餓死するものはあっても、餓死した僧のあったと聞いたためしはない。長い習慣はおそろしいもので、全国を通じたら何百万からのそれらの人たちが寺院に遊食していても、あたりまえのことのように思われて来た。これはあまりに多くを許し過ぎた結果である。そこで、祭葬のことを寺院から取り戻《もど》して、古式に復したら、もっとみんなの目もさめようと言うのである。
「今日《こんにち》ほど宗教の濁ってしまった時代もめずらしい。」とまた半蔵の声で、「まあ、諸国の神宮寺《じんぐうじ》なぞをのぞいてごらんなさい。本地垂跡《ほんじすいじゃく》なぞということが唱えられてから、この国の神は大日如来《だいにちにょらい》
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