みや》さまの御通行までには間に合いそうもない。」
 その時、寿平次が助郷願書の件で調印を求めに来たことを告げると、半蔵は「まあ、そこへ腰掛けるさ。」と言って、自分でも普請場の材木に腰掛ける。お民はそのそばを通り過ぎて、裏の立ち退《の》き場所にいる姑《しゅうとめ》(おまん)の方へと急いだ。
「寿平次さん、君はよいことをしてくれた。助郷のことは隣の伊之助さんからも聞きましたよ。阿爺《おやじ》はもとより賛成です。」と半蔵が言う。
「さあ、これから先、助郷もどうなろう。」と吉左衛門も案じ顔に、「これが大問題だぞ。先月の二十二日、大坂のお目付《めつけ》がお下りという時には、伊那の助郷が二百人出た。例幣使(日光への定例の勅使)の時のことを考えてごらん。あれは四月の六日だ。四百人も人足を出せと言われるのに、伊那からはだれも出て来ない。」
「結局、助郷というものは今のままじゃ無理でしょう。」と半蔵は言う。「宿場さえ繁昌《はんじょう》すればいいなんて、そんなはずのものじゃないでしょう。なんとかして街道付近の百姓が成り立つようにも考えてやらなけりゃうそですね。」
「そりゃ馬籠じゃできるだけその方針でやって
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