て、娘の手を放させた。「まあ、この子は、お菓子と間違えてさ。」
新しい異国の香気《におい》は、そこにいるだれよりも寿平次の心を誘った。めずらしい花の形、横に浮き出している精巧なローマ文字――それはよく江戸|土産《みやげ》にもらう錦絵《にしきえ》や雪駄《せった》なぞの純日本のものにない美しさだ。実に偶然なことから、寿平次は西洋ぎらいでもなくなった。古銭を蒐集《しゅうしゅう》することの好きな彼は、異国の銀貨を手に入れて、人知れずそれを愛翫《あいがん》するうちに、そんな古銭にまじる銀貨から西洋というものを想像するようになった。しかし彼はその事をだれにも隠している。
「これはどうして使うものだろうねえ。」とおばあさんはまたお民に言って見せた。「なんでも水に溶かすという話を聞いたから、わたしは一つ煮て見ましたよ。これが、お前、ぐるぐる鍋《なべ》の中で回って、そのうちに溶けてしまったよ。棒でかき回して見たら、すっかり泡《あわ》になってさ。なんだかわたしは気味が悪くなって、鍋ぐるみ土の中へ埋めさせましたよ。ひょっとすると、これはお洗濯《せんたく》するものじゃないかもしれないね。」
「でも、わたしは
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