村々のものを集めてよく相談して見ようと先方でも折れて出ましてね、そんな約束でわたしも別れて来ましたよ。」
「そいつはお骨折りでした。早速《さっそく》、奉行所あての願書を作ろうじゃありませんか。野尻《のじり》、三留野《みどの》、妻籠《つまご》、馬籠《まごめ》、これだけの庄屋連名で出すことにしましょう。たぶん、半蔵さんもこれに賛成だろうと思います。」
「そうなさるがいい。今度わたしも伊那へ行って、つくづくそう思いました。徳川様の御威光というだけでは、百姓も言うことをきかなくなって来ましたよ。」
「そりゃ得右衛門さん、おそい。いったい、諸大名の行列はもっと省いてもいいものでしょう。そうすれば、助郷も助かる。参覲交代なぞはもう時世おくれだなんて言う人もありますよ。」
「こういう庄屋が出て来るんですからねえ。」
 その時、寿平次は「今一手」と言いたげに、小屋の壁にたてかけた弓を取りあげて、弦《つる》に松脂《まつやに》を塗っていた。それを見ると、得右衛門も思い出したように、
「伊那の方でもこれが大流行《おおはやり》。武士が刀を質に入れて、庄屋の衆が弓をはじめるか。世の中も変わりましたね。」
「得右
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