した。
 やがて両村立ち合いの上で、かねて争いの場処である草山に土塚を築《つ》き立てる日が来た。半蔵は馬籠の惣役人《そうやくにん》と、百姓|小前《こまえ》のものを連れて、草いきれのする夏山の道をたどった。湯舟沢からは、庄屋、組頭四人、百姓全部で、両村のものを合わせるとおよそ二百人あまりの人数が境界の地点と定めた深い沢に集まった。
「そんなとろくさいことじゃ、だちかん。」
「うんと高く土を盛れ。」
 半蔵の周囲には、口々に言いののしる百姓の声が起こる。
 四つの土塚がその境界に築《つ》き立てられることになった。あるものは洞《ほら》が根《ね》先の大石へ見通し、あるものは向こう根の松の木へ見通しというふうに。そこいらが掘り返されるたびに、生々《なまなま》しい土の臭気が半蔵の鼻をつく。工事が始まったのだ。両村の百姓は、藪蚊《やぶか》の襲い来るのも忘れて、いずれも土塚の周囲に集合していた。
 その時、背後《うしろ》から軽く半蔵の肩をたたくものがある。隣村|妻籠《つまご》の庄屋として立ち合いに来た寿平次が笑いながらそこに立っていた。


「寿平次さん、泊まっていったらどうです。」
「いや、きょうは
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