るくらいで、最初のうちこそ御隠居も外国に対しては、なんでも一つ撃《う》ち懲《こら》せという方にばかり志《こころざし》を向けていたらしいが、だんだん岩瀬肥後の説を聞いて大いに悟られるところがあった。御隠居はもとより英明な生まれつきの人だから、今日《こんにち》の外国は古《いにしえ》の夷狄《いてき》ではないという彼の言葉に耳を傾けて、無謀の戦いはいたずらにこの国を害するに過ぎないことを回顧するようになった。その時、御隠居は彼に一つのたとえ話を告げた。ここに一人の美しい娘がある。その娘にしきりに結婚を求めるものがある。再三拒んで容易に許さない。男の心がますます動いて来た時になって、始めて許したら、その二人《ふたり》の愛情はかえって濃《こま》やかで、多情な人のすみやかに受けいれるものには勝《まさ》ろうというのである。実際、あの御隠居が断乎《だんこ》として和親貿易の変更すべきでないことを彼に許した証拠には、こんな娘のたとえを語ったのを見てもわかる。御隠居がすでにこのとおり、外交のやむを得ないことを認めて、他の親藩にも外様《とざま》の大名にも説き勧めるくらいだ。それまで御隠居を動かして鎖攘《さじょう
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