も書いてよこした。とうとう養生もかなわなかったという金兵衛の残念がる様子が目に見えるように、その手紙の中にあらわれている。
 平素懇意にする金兵衛が六十三歳でこの打撃を受けたということは、寛斎にとって他事《ひとごと》とも思われない。今一通の手紙は旧《ふる》いなじみのある老人から来た。それにはまた、筆に力もなく、言葉も短く、ことのほかに老い衰えたことを訴えて、生きているというばかりのような心細いことが書いてある。ただ、昔を思うたびに人恋しい、もはや生前に面会することもあるまいかと書いてある。「貴君には、いまだ御往生《ごおうじょう》もなされず候《そうろう》よし、」ともある。
「いまだ御往生もなされず候よしは、ひどい。」
 と考えて、寛斎は哭《な》いていいか笑っていいかわからないようなその手紙の前に頭をたれた。
 寛斎の周囲にある旧知も次第に亡《な》くなった。達者で働いているものは数えるほどしかない。今度十七歳の鶴松を先に立てた金兵衛、半蔵の父吉左衛門――指を折って見ると、そういう人たちはもはや幾人も残っていない。追い追いの無常の風に吹き立てられて、早く美濃へ逃げ帰りたいと思うところへ、横浜
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