ものだ、外国貿易ももはや売ろうと買おうと勝手次第だ、それでも御紋付きの品々、雲上の明鑑、武鑑、兵学書、その他|甲冑《かっちゅう》刀剣の類《たぐい》は厳禁であると数えて見せるのも、この亭主だ。
旧暦十二月のさむい日が来た。港の空には雪がちらついた。例のように寛斎は宿の机にむかって、遠く来ている思いを習字にまぎらわそうとしていた。そこへ江戸両国の十一屋から届いたと言って、宿の年とったかみさんが二通の手紙を持って来た。その時、かみさんは年老いた客をいたわり顔に、盆に載せた丼《どんぶり》を階下《した》から女中に運ばせた。見ると、寛斎の好きなうどんだ。
「うどんのごちそうですか。や、そいつはありがたい。」
「これはうでまして、それからダシで煮て見ました。お塩で味がつけてございます。これが一番さっぱりしているかと思いますが、一つ召し上がって見てください。」
「うどんとはよい物を造ってくだすった。わたしはお酒の方ですがね、寒い日にはこれがまた何よりですよ。」
「さあ、お口に合いますか、どうですか。手前どもではよくこれをこしらえまして、年寄りに食べさせます。」
牡丹屋ではすべてこの調子だ。
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