りあえず当地のありさま申し上げ候。
以上。」
[#ここで字下げ終わり]
 実に、一息に、かねて心にかかっていたことが半蔵の胸の中を通り過ぎた。これだけの消息も、木曾の山の中までは届かなかったものだ。すくなくも、半蔵が狭い見聞の世界へは、漠然《ばくぜん》としたうわさとしてしかはいって来なかったものだ。あの彦根《ひこね》の早飛脚が一度江戸のうわさを伝えてからの混雑、狼狽《ろうばい》そのものと言うべき諸大名がおびただしい通行、それから引き続きこの街道に起こって来た種々な変化の意味も、その時思い合わされた。
「寿平次さん、君はこの手紙をどう思いますね。」
「さあ、わたしもこれほどとは思わなかった。」
 半蔵は寿平次と顔を見合わせたが、激しい精神《こころ》の動揺は隠せなかった。

       三

 郷里を出立してから十一日目に三人は板橋の宿を望んだ。戸田川の舟渡しを越して行くと、木曾街道もその終点で尽きている。そこまでたどり着くと江戸も近かった。
 十二日目の朝早く三人は板橋を離れた。江戸の中心地まで二里と聞いただけでも、三人が踏みしめて行く草鞋《わらじ》の先は軽かった。道中記のたよりになる
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