ました。帳面です、内に入つてるのは。是《これ》は君、家へ帰つてから開けて見るんですよ。いいかね。学校の内で開けて見るんぢや無いんですよ――ね、是を君に呈げますから。』
と言つて、丑松は自分の前に立つ少年の驚き喜ぶ顔を見たいと思ふのであつた。意外にも省吾は斯の贈物を受けなかつた。唯もう目を円《まる》くして、丑松の様子と新聞紙の包とを見比べるばかり。奈何《どう》して斯様《こん》なものを呉れるのであらう。第一、それからして不思議でならない。と言つたやうな顔付。
『いゝえ、私は沢山です。』
と省吾は幾度か辞退した。
『其様《そん》な、君のやうな――』と丑松は省吾の顔を眺めて、『人が呈《あ》げるツて言ふものは、貰ふもんですよ。』
『はい、難有う。』と復た省吾は辞退した。
『困るぢやないか、君、折角《せつかく》呈げようと思つて斯うして持つて来たものを。』
『でも、母さんに叱られやす。』
『母さんに? 其様な馬鹿なことが有るもんか。私が呈げるツて言ふのに、叱るなんて――私は君の父上《おとつ》さんとも懇意だし、それに、君の姉さんには種々《いろ/\》御世話に成つて居るし、此頃《こなひだ》から呈げよう
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