ながかほばせを
    あげよかし

ながくれなゐの
    かほばせに
ながるゝなみだ
    われはぬぐはむ
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 ゆふぐれしづかに


ゆふぐれしづかに
     ゆめみむとて
よのわづらひより
     しばしのがる

きみよりほかには
     しるものなき
花かげにゆきて
     こひを泣きぬ

すぎこしゆめぢを
     おもひみるに
こひこそつみなれ
     つみこそこひ

いのりもつとめも
     このつみゆゑ
たのしきそのへと
     われはゆかじ

なつかしき君と
     てをたづさへ
くらき冥府《よみ》まで
     かけりゆかむ
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 月夜


しづかにてらせる
     月のひかりの
などか絶間なく
     ものおもはする
さやけきそのかげ
     こゑはなくとも
みるひとの胸に
     忍び入るなり
なさけは説《と》くとも
     なさけをしらぬ
うきよのほかにも
     朽ちゆくわがみ
あかさぬおもひと
     この月かげと
いづれか聲なき
     いづれかなしき
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 強敵


一つ
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