下川に
うれひしづみし
    よなりけり

  姉
こぞのこよひは
    わがともの
おもひははるの
    よのゆめや

よをうきものに
    いでたまふ
ひとめをつゝむ
    よなりけり

  妹
こぞのこよひは
    わがともの
そでのかすみの
    はなむしろ

ひくやことのね
    たかじほを
うつしあはせし
    よなりけり

  姉
わがみぎのてに
    くらぶれば
やさしきなれが
    たなごゝろ

ふるればいとど
    やわらかに
もゆるかあつく
    おもほゆる

  妹
もゆるやいかに
    こよひはと
とひたまふこそ
    うれしけれ

しりたまはずや
    うめがかに
わがうまれてし
    はるのよを


 二 蓮花舟

  しは/\もこほるゝつゆははちすはの
      うきはにのみもたまりけるかな

  姉
あゝはすのはな
    はすのはな
かげはみえけり
    いけみづに

ひとつのふねに
    さをさして
うきはをわけて
    こぎいでむ

  妹
かぜもすゞしや
    はがくれに
そこにもしろし
    はす
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