フ早朝の散歩もどんなものか。
ずつと以前淺草新片町の方に住んだころ、わたしもよく夏の朝の散歩に出て隅田川の岸などを歩き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つたものだが、あのころは午前の十一時ごろから仕事にとりかゝつて、おもに午後に働いた。家のものの寢しずまる深夜のころまで机にむかつてゐて、どうかすると一番鷄の聲を聞いたこともある。ところが、このごろはおもに午前中を仕事にあてたいと思ふものだから、朝早くそこいらを歩き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]るとなると、いろ/\見つける物象も多いかはりに、どうも氣が散つて困る。やはり今のわたしには靜かにしてゐる方がいゝ。たまには家のものを連れ、月島の魚河岸の方まで出掛けて行つて、そこで探した鮮魚なぞを提げながら、朝飯前に歸つて來ることもあるが、そんなことはまづ例外だ。
朝食。毎朝簡單に茶粥で濟ませる。一ころはオート・ミイルを試みたこともあつたが、どうしたものか町で賣る品も粗惡なものばかりになつて、だん/\自分の口には適しなくなつた。茶粥二椀、牛乳一合、その用ゐ方は殆んどオート・ミイルの場合と同じだ。これがまたわたしの好物の一つ
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