゚まで耳について、毎日三十度以上の熱した都會の空氣の中では夜はあつても無いにもひとしかつた。わたしは古人の隱逸を學ぶでも何でもなく、何とかしてこの暑苦を凌がうがためのわざくれから、家の前の狹い露地に十四五本ばかりの竹を立て、三間ほどの垣を結んで、そこに朝顏を植ゑた。といふは、隣家にめぐらしてある高いトタン塀から來る反射が、まともにわたしの家の入口の格子をも露地に接した窓をも射るからであつた。わたしはまだ日の出ないうちに朝顏に水をそゝぐことの發育を促すに好い方法であると知つて、それを毎朝の日課のやうにしてゐるうちに、そこにも可憐な秋草の成長を見た。花のさま/″\、葉のさま/″\、蔓のさま/″\を見ても、朝顏はかなり古い草かと思ふ。蒸暑く寢苦しい夜を送つた後なぞ、わたしは町の空の白まないうちに起きて、夜明け前の靜かさを樂しむこともある。二階の窓をあけて見ると、まだ垣も暗い。そのうちに、紅と藍色とのまじつたものを基調の色素にして瑠璃にも行けば柿色にも薄むらさきにも行き、その極は白にも行くやうな花の顏がほのかに見えて來る。物數寄《ものずき》な家族のもののあつまりのことで、花の風情を人の姿に見立
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