ナになる小説本の組方を參考に天地左右の開きを定めたこともある。私は又、なるべく、無駄を省いて本を造りたいと思ひ、奧附が必ずしも本の最後に、と云ふ風に考へなくも、それを扉と一緒にしようかとまで思つたこともあつたが、それはあまりに極端だと云ふ、當時上田書店に居た小酒井五一郎君の話で思ひ止まつたこともあつた。
これらは一例に過ぎないが、私も年若くあつたから、あの本を世に送り出すについては、かなり心を碎いた。
『緑蔭叢書』の出版は小さな試みには相違なかつたが、進んで新しい讀者を開拓すること、自分等の著作生活を築くこと、其の他いろ/\のことを私に教へたのも、あの自費出版であつた。
二つの像
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老年は私が達したいと思ふ理想郷だ。今更私は若くなりたいなぞと望まない。ほんたうに年をとりたいものだと思ふ。十人の九人までは、年をとらないで萎れてしまふ。その中の一人だけが僅かに眞の老年に達し得るかと思ふ。
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こんなことを物のはしに書きつけて見たのは、今から十四五年の前にあたる。その頃の私は孫の可愛さといふものを經驗したこともなかつたから、自分の
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