ニを思ひ立たれた。これはトルストイが晩年に到達した教育事業の精神にも近い。その意味から、わたしは君が新しき出發を祝し、志操の堅きこと十年一日の如き君のためにこの應援の言葉を送るものである。
世界文藝大辭典
畏敬する吉江喬松君が世界文藝大辭典編輯の大きな事業も着々その工作を進め、今やその第一卷を刊行し、第二卷刊行の日もまた近きにあるであらうと聞く。これは東洋方面の文化の覺醒を期待して、世界のそれに合流せしむることの眼に見えない一つの港を造らうとするがごときものである。吉江君はその起工の始めに當り、多くの希望を抱いて出發せられたもののやうである。編輯者としての君が所謂『現實に徹して理想に向ひ、國民意識に徹して世界意識に伸展する力』とは則ちこれを造らうとする君の意圖を語るもので、そのために君の用意された比較研究と歸納實證の方法は、あたかも海波をせきとめるために築きあげた港の堤防に譬ふべきものであらうか。もしこれが無事に竣工されたあかつきには、凡ゆる種類の文藝思想藝術を載せた何百の船がこの港に碇泊すると言ひ盡すことも出來まい。雄大な氣象はおのづからそこに感ぜらるゝであらう。吉江
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