ゥよ。古人の設計になる茶室の簡素がいかに數量の美に基くかを見よ。)私の周圍には、すでにこのことを言ひ出した人もある。かうした時代に順應して、出來るだけ私達の生活を單純にするためには、數理をおろそかにしてはならない。
杜子美
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玉露凋傷楓樹林
巫山巫峽氣蕭森
江間波浪兼[#レ]天涌
塞上風雲接[#レ]地陰
叢菊兩開他日涙
孤舟一繋故園心
寒衣處々催[#二]刀尺[#一]
白帝城高急[#二]暮砧[#一]
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この詩、五句目にある兩開とは、兩年の秋に開くの意であり、他日の涙とは過ぎし日の涙の意である。昨年の秋に開いた菊が今年の秋にも開いて、過ぎし日の涙を催させたとの意である。六句目の故園を思ふ心にかけて孤舟といふことを言ひ出して來てあるのは、作者が山峽の間にゐて江流の涌き立つさまを眺めながら、一日も早く舟に乘つてその山峽を出たいと思ひ立つ時であつたからである。これは『秋興八首』としてある詩の一つで、作者は杜子美である。
わたしはまだ信濃の山の上の方にゐて、千曲川のスケッチなぞをつくつてゐた頃のことであつた。當時小諸義塾の塾主であつた
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