、私の考へでやり、先の意匠を傷けないで、新しい趣味のものが出来たかと思ふ。
以上は詩集の方で、小説の方は、『緑蔭叢書』の第一編の『破戒』である。緑色の表紙は、どうかして私に合ふ様な表紙を造りたいと思つて、文字や輪廓は緑の蔭の色で、地は日光の当つた緑色のつもりで造った。三編とも同じで、初めは三宅克己さんにお願ひして、色々工夫して貰つた。『破戒』の挿画は鏑木清方さんに御願ひした。信州に居て、都会の方に、田舎の事を描いて貰ふので、信州の方から百姓の収穫の写真なんぞを参考として送つたりして、画いて頂いた。
一体『緑蔭叢書』の表紙は、色々の色のある紙があれば宜いが、無いから石版にする事にした。泰金堂で、種々骨折つて呉れたが、思はしい色がないので、石目にして造つて見た事などが有つた。何にしろ職工が代る度に変つて、同じ様に行かないで困つてる。是丈は薄くつて深みの有る色を出して見たいと骨折つて、木の葉の桜や何かの若葉の色を写して見たいと思つたりした。同じグリンでもどうかして、宜い色を出さうと思つて居た。
二編の『春』は和田さんが、稲毛に居る時分に昔知つて居るものだから、大変喜んで、進んで、描かう
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