んは袖子《そでこ》の兄《にい》さん達《たち》が学校《がっこう》から帰《かえ》って来《く》る場合《ばあい》を予想《よそう》して、娘《むすめ》のためにいろいろ口実《こうじつ》を考《かんが》えた。
昼《ひる》すこし前《まえ》にはもう二人《ふたり》の兄《にい》さんが前後《ぜんご》して威勢《いせい》よく帰《かえ》って来《き》た。一人《ひとり》の兄《にい》さんの方《ほう》は袖子《そでこ》の寝《ね》ているのを見《み》ると黙《だま》っていなかった。
「オイ、どうしたんだい。」
その権幕《けんまく》に恐《おそ》れて、袖子《そでこ》は泣《な》き出《だ》したいばかりになった。そこへお初《はつ》が飛《と》んで来《き》て、いろいろ言《い》い訳《わけ》をしたが、何《なに》も知《し》らない兄《にい》さんは訳《わけ》の分《わ》からないという顔付《かおつ》きで、しきりに袖子《そでこ》を責《せ》めた。
「頭《あたま》が痛《いた》いぐらいで学校《がっこう》を休《やす》むなんて、そんな奴《やつ》があるかい。弱虫《よわむし》め。」
「まあ、そんなひどいことを言《い》って、」とお初《はつ》は兄《にい》さんをなだめるようにした
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