心を喜ばせた。私は子供のような物めずらしさを以て人夫達の烈《はげ》しい呼吸《いき》を聞いた。凍った雪の上を疾走して行った時は、どうかすると私は桑畠の中へ橇|諸共《もろとも》ブチマケラレそうな気がした。
「ホウ――ヨウ――」という掛声と共に、雪の上を滑《すべ》る橇の音、人夫達がサクサク雪を踏んで行く音まで私の耳に快感を起させた。川船で通って来た岸の雪景色は私の前に静かに廻転した。
 中野近くで橇を降りた。道路に雪のある間は足も暖かであったが、そのうちに黄ばんだ泥をこねて行くような道に成って、冷く、足の指も萎《しび》れた。親切な飯山の宿で、爪掛《つまかけ》を貰って、それを私は草鞋《わらじ》の先に掛けて穿《はい》て来た。
 一月十四日のことで村々では「ものづくり」というものを祝った。「みずくさ」という木の赤い条《えだ》に、米の粉をまるめて繭《まゆ》の形をつくる。それを神棚に飾りつける。養蚕の前祝だという。
 帰りには、日光の為に眼もまぶしく、雪の反射で悩まされた。その日は千曲川の水も黄緑に濁って見えた。
 豊野から復た汽車で、山の上の方へ戻って行った時は次第に寒さの加わることを感じた。けれど
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