光寺よりも纏まつてゐるやうに見えますが――。」
と大谷君はいひ添へたが、私にはどつちも好かつた。どつちの庭が姉で、どつちが妹であるとさへもいへなかつた。醫光寺を見た眼で萬福寺の庭を見ると、あの長く垂れさがつた古い櫻の枝のかはりに、こゝには岩の間から身を起した大きな蘇鐵がある。一方の庭に白く咲き殘つてゐた山梔《くちなし》のかはりに、こゝには腹這つてゐる磯馴《そなれ》の松がある。かすかに鯉の動くのが見えるほど薄濁りのした水のかはりに、こゝには青い蓮の葉で滿たされた池がある。どつしりとした古風な石燈籠が一つこの池の水に臨んで、その邊には圓く厚ぽつたい「つはぶき」も多く集めてあつた。前手の汀《みぎは》のところに見える藺《ゐ》、あやめなぞの感じもよい。仲のいゝ友達のやうな蓮の葉が物をいつてゐる側には、河骨《かうほね》も夢を見てゐた。
その時になると、私もわざ/\この山陰の西まで旅して來た甲斐があつたと思つた。松江を終りとして東京の方へ引返したら、こんなところに昔の人の深い心の殘つてゐることも知らず、このよい庭も見落して行くところであつたと思つた。私は住職がそこへ取出して來た記念帖のはしに、僅
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