からするものとの落ち合つたところが、津和野の津和野らしい感じであつて、ちやうど眞水と潮水との混り合つた河口の趣に似てゐる。長州の方からさして來る潮はこゝで石見の眞水と合ふ。おそらくかうした土地柄にのみ見出さるゝものは、その邊の微妙な消息は、人の氣質にも、言葉にもあらはれてゐよう。私は自分の郷里が信濃の西のはづれにあつて、殆んど美濃に接近してゐるところから、かうした津和野のやうな土地柄には特別の興味を覺える。その意味から、こゝを鴎外漁史の生地と考へて見ることもおもしろい。
自動車は町中のある家の前に停つた。そこには中學校の宮西君、小學校の村上君、その他の諸君が、夕飯の膳を用意して私達を待つてゐてくれた。實際、雲のやうにやつて來て、また雲のやうに離れて行かなければならなかつたとは私達のことである。
私達は土地の人達と一緒に樂しい膳にむかつて、吸ひ物椀の蓋を取つて見たばかりのころに、最早小郡行の發車の時が迫つたことを聞いた。そこに集まつた中には、飮みかけた酒の盃を置いて停車場まで別れを告げに來てくれた人達もあつた。
「鷄ちやん、山一つ越すともう長門《ながと》の國ださうだよ。トンネルの内
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