り我が振る袖を妹《いも》見つらむか
さゝの葉はみ山もさやにさやげども吾《あ》は妹おもふ別れ來ぬれば
青駒のあがきを速《はや》み雲居にぞ妹があたりを過ぎて來にける
秋山に落つるもみぢ葉しましくはな散りみだれそ妹があたり見む
鴨山のいは根しまける吾《われ》をかも知らにと妹が待ちつゝあらむ
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 これらの古歌を聯想させるやうな遠い昔の地勢は、どんなであつたらうか。今は鴨山もない。海嘯《つなみ》のために流沒したその一帶の地域からは、人工の加へられた木片、貝類、葦の根などの發掘せらるゝことがあるといふ。昔は一面の入江であつたといひ傳へられるところには、豐かな平野が私達の眼の前にひらけてゐた。この邊の周圍はそんなに變つてしまつた。私は高角山にある古い松の間をめぐりにめぐつて、一層立ち去りがたい思ひをした。
 青い海だけは、それでも變らずにあるのだらう。北の方にそれが望まれる。私はこの山陰の旅に來て、城崎に近い瀬戸の日和山から、先づ望んだのもその海であつたことを胸に浮かべて、これが最後に望んで行く日本海であらうとも思つた。大谷君は私の側に來て、沖の方にある一つの島を私に指さして
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