三人の訪問者
島崎藤村
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)光沢《つや》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なれ/\
−−
「冬」が訪ねて来た。
私が待受けて居たのは正直に言うと、もっと光沢《つや》のない、単調な眠そうな、貧しそうに震えた、醜く皺枯れた老婆であった。私は自分の側に来たものの顔をつくづくと眺めて、まるで自分の先入主となった物の考え方や自分の予想して居たものとは反対であるのに驚かされた。私は尋ねて見た。
「お前が『冬』か。」
「そういうお前は一体私を誰だと思うのだ。そんなにお前は私を見損なって居たのか。」
と「冬」が答えた。
「冬」は私にいろいろな樹木を指して見せた。あの満天星《どうだん》を御覧、と言われて見ると旧い霜葉はもう疾《と》くに落尽して了ったが、茶色を帯びた細く若い枝の一つ一つには既に新生の芽が見られて、そのみずみず
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