あり
きみがはかばに
    さかきあり

くさはにつゆは
    しげくして
おもからずやは
    そのしるし

いつかねむりを
    さめいでて
いつかへりこん
    わがはゝよ

紅羅《あから》ひく子も
    ますらをも
みなちりひぢと
    なるものを

あゝさめたまふ
    ことなかれ
あゝかへりくる
    ことなかれ

はるははなさき
    はなちりて
きみがはかばに
    かゝるとも

なつはみだるゝ
    ほたるびの
きみがはかばに
    とべるとも

あきはさみしき
    あきさめの
きみがはかばに
    そゝぐとも

ふゆはましろに
    ゆきじもの
きみがはかばに
    こほるとも

とほきねむりの
    ゆめまくら
おそるゝなかれ
    わがはゝよ

  合唱

   一 暗香《あんこう》
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はるのよはひかりはかりとおもひしを
    しろきやうめのさかりなるらむ
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   姉

わかきいのちの
    をしければ
やみにも春の
    香《か》に酔はん

せめてこよひは
    さ
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