旧主人
島崎藤村
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)瘠《やせ》ぎすな
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)柏木|界隈《かいわい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)手※[#「※」は底本では「はばへん+白」、18−15]
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一
今でこそ私もこんなに肥ってはおりますものの、その時分は瘠《やせ》ぎすな小作りな女でした。ですから、隣の大工さんの御世話で小諸《こもろ》へ奉公に出ました時は、人様が十七に見て下さいました。私の生れましたのは柏木《かしわぎ》村――はい、小諸まで一里と申しているのです。
柏木|界隈《かいわい》の女は佐久《さく》の岡の上に生活《くらし》を営《た》てて、荒い陽気を相手にするのですから、どうでも男を助けて一生|烈《はげ》しい労働《はたらき》を為《し》なければなりません。さあ、その烈しい労働を為《す》るからでも有ましょう、私の叔母でも、母親《おふくろ》でも、強健《つよ》い捷敏《はしこ》い気象です。私は十三の歳《とし》から母親に随《
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