たりの好いところで余念なく張物をしていた。彼女の友達がそこへ来た時は、「これがお島さんか」という顔付をして、暫《しばら》く彼女を眺めたままで立っていた。
 お島は急いで張物板を片附け、冠っていた手拭を取って、六年ばかりも逢えなかった旧《もと》の友達を迎えた。
「まあ、岡本さん――」
 とその友達は、お島がまだ娘でいた頃の姓を可懐《なつか》しそうに呼んだ。
 一汽車待つ間、話して、お島の友達は長野の方へ乗って行った。その日は日曜だった。高瀬は浅黄の股引《ももひき》に、尻端を折り、腰には手拭をぶらさげ、憂鬱な顔の中に眼ばかり光らせて、他《よそ》から帰って来た。お島は勝手口の方へ自慢の漬物を出しに行って来て、炉辺で夫に茶を進めながら、訪ねてくれた友達の話をして笑った。
「私が面白い風俗《ふう》をして張物をしていたもんですから、吃驚《びっくり》したような顔してましたよ……」
「そんなに皆な田舎者に成っちゃったかナア」
 と高瀬も笑って、周囲を見廻した。煤《すす》けた壁のところには、歳暮《せいぼ》の景物に町の商家で出す暦附の板絵が去年のやその前の年のまで、子供の眼を悦ばせるために貼《はり》附けて
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