、五十近い年|恰好《かっこう》の婦人が顔を出した。
「小泉です。橋本の叔父です」
叔父と聞いて、婦人は三吉を静かな奥深い客間へ案内した。正太も豊世も出て居なかった。その時、三吉は、この婦人の口から、正太が既に名古屋の相場で失敗したことを聞いた。この婦人の若い養子も、正太と手を組んで、大きな穴を開けたと聞いた。
午後の四時頃に正太夫婦は散歩から戻って来た。表二階が正太の借りている部屋であった。
「豊世、何かお前は叔父さんに見て来て進《あ》げたら可かろう」
と正太は買物を命じて置いて、表から裏口へ通り抜けられる土間の板を渡った。三吉もその後から、この家の母親が坐っている部屋を横に見て、高い壁に添うて、箱梯子《はこばしご》を上った。
二階は薄暗かった。三吉は正太と窓に近く坐って、互に顔を見合せた。正太が相場の失敗を語り出す前に、その意味は叔父の方へ通じていた。
「や、種々《いろいろ》な話が有る」
と三吉は正太の並べる言葉を遮《さえぎ》った。何となく正太は悄然《しょんぼり》としていた。それを見て、叔父は自分の旅を語り始めた。
「どうも叔父さん、種々御世話様で御座いました」と豊世が上っ
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