直言うと、これはと思うような人は無いものですネ……昔の女の書いたものを見ると、でも面白そうな人もある。八月のさかりに風通しの好いところへ花莚《はなむしろ》を敷いて、薄化粧でもして、サッパリとした物を着ながら独《ひと》りで寝転《ねころ》んで見たなんて――私はそういう人が面白いと思います」
豊世とお雪は顔を見合せた。
子供の喧嘩《けんか》する声が起った。それを聞きつけて、お雪は豊世と一緒に階下《した》へ降りた。茶の用意が出来たと言われて、三吉も下座敷へ飲みに来た。
「馬鹿野郎!」
いきなり種夫はそいつを父へ浴せ掛けた。
「種ちゃんは誰をつかまえても『馬鹿野郎』だ」と三吉は子供を見て笑った。「でも、お前の『馬鹿野郎』は可愛らしい『馬鹿野郎』だよ」
「種ちゃんの口癖に成って了いました」とお雪は豊世に言って聞かせた。「御客のある時なぞは、真実《ほんと》に困りますよ」
「豊世さん、煙草はいかが」
と三吉は巻煙草を取出して、女の客や妻の前でウマそうに燻《ふか》した。
「一本頂きましょうか」と豊世は手を出した。「自分じゃそう吸いたいとも思いませんが、他様《ひとさま》が燻していらっしゃると、
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