ずつ下婢《おんな》に連れられて、町の湯から帰った。銀造も洗って貰いに行って来た。お雪は傘《かさ》をさして、終《しまい》に独りで泥濘《ぬか》った道を帰って来た。
明るい空からは、軽い綿のようなやつがポタポタ落ちた。お雪は足袋《たび》も穿《は》いていなかった。多くの女のように、薄着でもあった。それでも湯上りのあたたかさと、燃えるような身体の熱とで、冷々《ひやひや》とした空気を楽しそうに吸った。濡《ぬ》れた町々の屋根は僅《わず》かに白い。雪は彼女の足許《あしもと》へも来て溶けた。この快感は、湯気で蒸された眼ばかりでなく、彼女の肌膚《はだ》の渇《かわき》をも癒《いや》した。
「長い湯だナア」と母は、帰って来たお雪を見て、叱るように言った。
「だって、子供を連れてるんですもの」
こうお雪は答えて置いて、勝手の方へ通り抜けた。
冷い水道の水はお雪を蘇生《いきかえ》るようにさせた。彼女は額の汗をも押拭《おしぬぐ》った。箪笥《たんす》の上には、家のものがかわるがわる行く姿見がある。彼女はその前に立った。細い黄楊《つげ》の鬢掻《びんかき》を両方の耳の上に差した。濡れて乱れたような髪が、その鏡に映っ
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