焼けるだけの運を持って来たものです――皆な、そういう風に具わって来るものです」
往時《むかし》は大きな漁業を営んで、氷の中にまで寝たというこの老人の豪健な気魄《きはく》と、絶念《あきらめ》の早さとは年を取っても失われなかった。女達の親しい笑声が起った。そこへ種夫と新吉が何か膳の上の物を狙《ねら》って来た。
「御行儀悪くしちゃ不可《いけない》よ」とお雪が子供を叱るように言った。
「種ちゃんか。新ちゃんも大きく成った。皆な好い児だネ」と老人は酔った眼で二人の孫の顔を眺めて、やがて酒の肴《さかな》を子供等の口へ入れてやった。
「コラ」と母は畳を叩《たた》く真似した。
子供等は頬張《ほおば》りながら逃出して行った。下婢《おんな》が洋燈《ランプ》を運んで来た。最早酒も沢山だ、と老人が言った。食事を終る毎に、老人は膳に対して合掌した。
その晩、残った仕事があると言って、三吉が二階へ上った頃は、雨の音がして来た。彼は下婢に吩咐《いいつ》けて階下《した》から残った洋酒を運ばせた。それを飲んで疲労《つかれ》を忘れようとした。
お雪も幼い銀造を抱いて、一寸上って来た。
「どうだ――」と三吉はお雪に
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