た。やがて彼は袂《たもと》を探って、鉛の入った繭《まゆ》を取出した。仕事もなく、徒然《つれづれ》なまま、この繭を土台にして、慰みに子供の玩具《おもちゃ》を考案している。こんなことを叔父に語った。正太は紀文が遺《のこ》したという翫具《おもちゃ》の話なぞを引いて、さすがに風雅な人は面白いところが有る、とも言った。
 日の光は町々の屋根を掠《かす》めて、部屋の内へ射込んでいた。臥床《とこ》の上にツクネンとしている叔父の前で、正太はその鉛の入った繭を転がして見せた。


 夫は家を寺院と観念しても、妻はもとより尼では無かった。
 そればかりでは無い、若い時から落魄《らくはく》の苦痛までも嘗《な》めて来た三吉には、薬を飲ませ、物を食わせる人の情を思わずにいられなかった。彼が臥床《とこ》を離れる頃には、最早|還俗《げんぞく》して了った。彼の精神《こころ》は激しく動揺した。屈辱をも感じた。
 兄妹《きょうだい》の愛――そんな風に彼の思想《かんがえ》は変って行った。彼は自分の妹としてお雪のことを考えようと思った。
 十一月の空気のすこし暗い日のことであった。めずらしく三吉はお雪を連れて、町の方へ買物に
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