ス》人の物語の中にあった言葉を胸に浮べて、三吉は心に悲しく思った。男が嫉む――それが自分のことだと感じた時は、彼は自分の性質を恥じずにいられなかった。許した、許した、とは言ったものの、未だ真実《ほんとう》に勉やお雪を許してはいなかった、とも思って来た。
階下《した》では、三人の子供も寝た。お雪は仕度が出来たと見えて階梯《はしごだん》のところへ来て声を掛けた。
「じゃ、父さん、一寸行って参ります」
表の木戸を開けていそいそと出て行く妻の様子は、二階に居てよく知れた。三吉は熟《じっ》と耳を澄まして、お雪の下駄《げた》の音を聞いた。
震える自分の身体《からだ》を見ながら、三吉は妻の帰りを待っていた。人が離縁を思うのもこういう時だろう。こんなことを悲しく考えて、終《しまい》に、今まで起したことも無い思想《かんがえ》に落ちて行った。僧侶《ぼうさん》のような禁欲の生活――寂しい寂しい生活――しかし、それより外に、養うべき妻子を養いながら、同時にこの苦痛を忘れるような方法は先ず見当らなかった。このまま家を寺院|精舎《しょうじゃ》と観る。出来ない相談とも思われなかった。三吉はその道を行こうと
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