入るとしよう」と森彦が言った。
皆な出発するという前の晩のことで、何となく家の内は混雑《ごたごた》していた。
食事を済ました後、叔父達は二階の縁側に近く居て、風呂から出る正太を待受けた。屋外《そと》は最早《もう》暗かった。お仙は煙草盆の火を見に上って来た。
森彦は胡坐《あぐら》にやりながら、
「お仙、兄さんは未だお風呂かネ」
「いえ、もう上ったずら……これから私達もよばれるところだ」
こう言って、お仙は一寸縁側へ出た。沈んだ空気は対岸の町々を遠くして見せた。河は湖水のように静かであった。お仙は欄《てすり》のところから夜の空を眺めて見て、やがて階下《した》へ引返して行った。
そのうちに正太が煙草入を手にして上って来た。チラと彼の眼は光った。
森彦は肥った身体を正太の方へ向けたが、顔はむしろ三吉の方へ向けて、
「いや、他《ほか》でも無いがネ――俺は途中で三吉と行き逢って、彼《あれ》がお前から相談を受けたという話を聞いた。そいつは考え物だぞ、三吉も一緒に来い、俺が行って正太によく話してやる。そう言って彼を引張って来たところだ」
「ああ、そのことですか」と正太は苦笑した。
三
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