向が多かった。叔父は自分に都合の好いような無理な注文ばかりした。
小泉の家の零落――それがお俊には唯悲しかった。それを思うと、涙が流れた。
叔母のお雪は門のところに居た。種夫を背中に乗せて楽隊の通るのを見せていた。
「種ちゃん、おんぶで好う御座んすね」
こう言って、お俊は叔母と一緒に家の内へ入った。
三吉は二階で仕事を急いでいた。お俊が楼梯《はしごだん》を上って、挨拶に行くと、急に叔父は厳格に成った。
「叔父さん、昨日は母親《おっか》さんが上りまして――」
とお俊は手を突いて言った。
「オオ、お前が来るだろうと思って、待っていた。まあ、是方《こっち》へお入り」
お俊の前に堅く成って坐っている三吉は、楽しい一夏を郊外で一緒に送った頃の叔父とは別の人のようで有った。よく可笑《おかし》な顔付をして、鼻の先へ皺《しわ》を寄せたり、口唇《くちびる》を歪《ゆが》めたりして、まるで古い能の面にでも有りそうなトボケた人相をして見せて、お俊やお延を笑わせたような、そんな忸々《なれなれ》しさは見られなかった。
三吉は自分でもそれに気がついていた。お俊と相対《さしむかい》に成ると、我知らず道徳
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