ことで有った。
他の兄弟の話が引出された。お種は、満洲から来た実の便りに、漸く彼も信用のある身《からだ》に成って、東京に留守居するお倉へ月々の生活費を送るまでに漕付《こぎつ》けたことを話し出した。
「三吉にその手紙を見せずと思って……つい郷里《くに》を出る時に忘れて来た」ともお種が言った。
宗蔵の噂も出た。「ああ捨身に成れば、人間は生きて行かれるものだ――彼《あれ》は彼で食える」と森彦は森彦らしいことを言って、笑った。
やがて、女中は誂《あつら》えて置いた鳥の肉を大きな皿に入れて運んで来た。紅《あか》くおこった火、熱した鉄鍋《てつなべ》、沸き立つ脂《あぶら》などを中央《まんなか》にして、まだ明るいうちに姉弟は夕飯の箸《はし》を取った。
「熱い御馳走だが、さあ、やっとくれ」
と森彦は腕まくりして始めた。
肉は焼けてジュウジュウ音がした。見る間に葱《ねぎ》も柔く成った。お種も、三吉も、口をホウホウ言わせながら、甘《うま》そうに汗を流して食った。
「豊世にも食わせてやると好かった」と森彦は懐をひろげて、胸のあたりに流れる汗を押拭《おしぬぐ》った。
「彼女《あれ》は病人を引受けてるで……俺がまた入替りに成って、彼女をも寄《よこ》すわい……御風呂にでも入れてやって御くれ」
こうお種は物静かな調子で答えた。
病院の方へ心が引かれて、お種はそこそこに別れて行ったが、燈火《あかり》の点く頃には、豊世が入替ってやって来た。豊世は行末のことまでも考えるという風で、沈み勝ちに見えた。その晩は遅く成って、豊世の兄、幸作の二人が郷里の方からこの旅舎へ着いた。
翌日の午前は、小泉兄弟を始め、ここへ来て脚絆《きゃはん》を解いた人達が一つ部屋に集って、正太が亡く成った後のことまでも話し合った。
「や、名古屋へ来て、ここの家の娘の踊を見ないということは無い」
と森彦が款待顔《もてなしがお》に言出した。彼は宿の小娘を呼んで、御客様に踊を御目に掛けよ、老婆《おばあ》さんにも来て、三味線《しゃみせん》を引くように、と笑い興じながら勧めた。
こういう中で、正太は病みつつあった。午後に一同が病院を訪ねた時は、正太は興奮した気味で、皆なの見ている前で手足なぞを拭かせたが、股《もも》のあたりの肉はすっかり落ちていた。嘔気《はきけ》があるとかで、滋養物も咽喉《のど》を通らなかった。正太は、豊世の
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