は皆な私に眼を着けてる……」
「それに、君、森彦さんは彼方へ行ってるしサ――何かにつけて相談してみるサ」
「そうです。森彦叔父さんと私とは、全く別方面ですから、仕事は違いますけれど……あの叔父さんも、いよいよ今度が最後の奮闘でしょう――私はそう思います――まあ、彼方へ出掛けて、あの叔父さんの働き振も見るんですネ」
「でも、あの兄貴も……変った道を歩いて行く人さネ。何を為《し》てるんだか家のものにまで解らない……それを平気でやってる……あそこは面白いナ」
「何かこう大きな事業《こと》をしそうな人だなんて、豊世なぞもよくそう言っています」
「あの兄貴は一生夢の破れない人だネ――あれで通す人だネ――しかし、ナカナカ感心なところが有るよ。お俊ちゃんの家なぞに対しては、よくあれまでに尽したよ。大抵の者ならイヤに成っちまう……」
豊世が貰い物だと言って、款待顔《もてなしがお》に羊羮《ようかん》なぞを切って来たので、二人は他の話に移った。
「ここまで来て、眺望《ながめ》の好い二階を見ないのも残念だ」という叔父を案内して、一寸《ちょっと》豊世は楼梯《はしごだん》を上った。何となく二階はガランとしていた。額だけ掛けてあった。三吉は川に向いた縁側の欄《てすり》のところへ出てみた。
「豊世さん、顔色が悪いじゃ有りませんか。どうかしましたかネ」
「すこし……でも、この節は宅もよく家に居てくれますよ……何事《なんに》も為ませんでも、家で御飯を食べてくれるのが私は何よりです……」
叔父と豊世とはこんな言葉を替《かわ》しながら、薄く緑色に濁った水の流れて行くのを望んだ。豊世は愁《うれ》わしげに立っていた。
「どうかしますと、私は……こう胸がキリキリと傷《いた》んで来まして……」
こう訴えるような豊世の顔をよく見て、間もなく三吉は正太の方へ引返した。
玄関の隅《すみ》には、正太が意匠した翫具《おもちゃ》の空箱が沢山積重ねてあった。郷里《くに》から取寄せた橋本の薬の看板も立掛けてあった。復た逢う約束をして、三吉は甥に別れた。
「正太さんを褒《ほ》めるのは貴方ばかりだ」
お雪が自分の家の二階で、夫に話しているところへ、勝手を知った豊世が階下《した》から声を掛けて上って来た。
「叔母さん、御免なさいよ。御断りも無しで入って来て――」
と豊世は親しげな調子で挨拶《あいさつ》した。
正太が
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