「父さん、御茶が入りました」
 とお雪は楼梯《はしごだん》の下から声を掛けたので、三吉も下りて来た。三人一緒に成ってからは、三吉も機嫌《きげん》を直した。叔母や姪は睦《むつ》まじそうに笑った。
 何処までもお俊は気をタシカに持って、言うことだけは叔父に言って置こうという風で、
「叔父さん――昨日母親さんに御話が有ったそうですが、宗蔵叔父さんと一緒に成ることは御断り申します」
 と帰りがけに、口惜《くや》しそうに言った。
 三吉は苦笑した。腹《おなか》の中で、「なにも俺は、無理に一緒に成れと言ったんじゃ無いんだ――串談《じょうだん》半分に、一寸そんなことを言って見たんだ――お前達はそう釈《と》って了うから困る」こうも思ったが、あまりお俊にキッパリ出られたので、それを言う気に成らなかった。
 姪が帰って行った後で、三吉は深い溜息《ためいき》を吐《つ》いた。
「何故、俊はああだろう」
 とお雪に言って見た。叔父の心は姪に解らず、姪の心は叔父に解らなかった。


 不意な出来事が実の留守宅に起った。お鶴を病院へ入れなければ成らない。この報知《しらせ》を持って、お延は三吉の家へ飛んで来た。不図した災難が因《もと》で、お鶴は発熱するように成ったのであった。
 間もなくお鶴は病院の方へ運ばれた。一週間ばかり煩《わずら》った後で、脳膜炎で亡くなった。
 河岸《かし》の柳の花も落ち始める頃、三吉は不幸な娘の為に通夜をする積りで、お俊の家をさして出掛けた。お雪も、子供を下婢《おんな》に托《たく》して置いて、夫よりは一歩《ひとあし》先《さき》に出た。
 親戚は実の留守宅へ集って来た。森彦、正太夫婦を始め、お俊が父方の遠い親戚とか、母方の縁者とか、そういう人達まで弔《くや》みを言い入れに来た。混雑《ごたごた》したところへ、丁度三吉も春先の泥をこねてやって来た。「鶴《つう》ちゃんも、可哀そうなことをしましたね」こういう言葉が其処《そこ》にも是処《ここ》にも交換《とりかわ》された。台所の方には女達が働いていた。
「ここの家は神葬祭だネ。禰宜《ねぎ》様を頼まんけりゃ成るまい」と森彦はお倉の方を見て言った。
「宗さんの旧《ふる》い歌仲間で、神主をしてる人があります」とお倉が答えた。「母親《おっか》さんの生きてる時分には、よくその人を頼んで来て貰いました」
「よし。では、正太は気の毒だが、その禰
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