はしごだん》を上った。正太は三吉から受取った手紙の礼を言った後で、
「豊世なぞは解らないから困ります。そりゃ芸者にもいろいろあります。ミズの階級も有ります。しかし、叔父さん、土地で指でも折られる位のものは、そう素人《しろうと》が思うようなものじゃ有りません。あの社会はあの社会で、一種の心意気というものが有ります。それが無ければ、誰が……教育あり品性ある妻を置いて……」
「いえ、僕はネ、君が下宿時代のことを忘れさえしなけりゃ――」
「難有《ありがと》う御座います。あの御守は紙入の中に入れて、こうしてちゃんと持ってます。今日は大に考えました」
こう言って、正太は激昂《げっこう》した眼付をした。彼は、真面目《まじめ》でいるのか、不真面目でいるのか、自分ながら解らないように思った。「とにかく肉的なと言ったら、私は素人の女の方がどの位肉的だか知れないと思います……」こんなことまで叔父に話して、微笑んで見せた。
「正太さん、何故君はそんなに皆なから心配されるのかね」
「どうも……叔父さんにそう聞かれても困ります」
「世の中には、君、随分仕たいことを仕ていながら、そう心配されない人もありますぜ。君のようにヤイヤイ言われなくても可《よ》さそうなものだ……何となく君は危いような感じを起させる人なんだネ」
「それです。塩瀬の店のものもそう言います――何処か不安なところが有ると見える――こりゃ大に省《かえり》みなけりゃ不可《いかん》ぞ」
その時、お雪が階下《した》から上って来て声を掛けた。
「父さん、※[#「※」は「ひとがしら+ナ」、108−17]が見えました」
親戚の客があると聞いて、正太は叔父と一緒に二階を下りた。
「正太さん、この方がお福さんの旦那さんです」
商用の為に一寸上京した勉を、三吉は甥に紹介した。勉は名倉の母からの届け物と言って、鯣《するめ》、数の子、鰹節《かつおぶし》などの包をお雪の方へ出した。
大掃除の日は、塵埃《ごみ》を山のように積んだ荷馬車が三吉の家の前を通り過ぎた。畳を叩《たた》く音がそこここにした。長い袖の着物を着て往来を歩くような人達まで、手拭《てぬぐい》を冠って、煤《すす》と埃《ほこり》の中に寒い一日を送った。巡査は家々の入口に検査済の札を貼付《はりつ》けて行った。
早く暮れた。お雪は汚《よご》れた上掩《うわッぱり》を脱いで、子供や下婢《お
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