陶器《せともの》の火鉢を各自《めいめい》に出すのがこの家の習慣に成っていた。その晩はある音楽者の客もあって、火鉢が何個《いくつ》も出た。ここはすべてが取片付けてあって、あまり部屋を飾る物も置いて無い。子供のある家で、時々泣出す声も聞える。六つばかりに成る、色の白い、髪を垂下げた娘が、曾根の傍へ来て、三吉夫婦に御辞儀をした。
「まあ、可愛らしいお娘《こ》さんですね」
 とお雪が言うと、娘は神経質らしい容子《しな》をして、やがてキマリが悪そうに出て行った。
 お雪から見ると、曾根は年長《としうえ》だった。お雪の眼には、憂鬱《ゆううつ》な、気心の知れない、隠そう隠そうとして深く自分を包んでいるような、まだまだ若く見える女が映った。曾根は最早いろいろな境涯を通り越して来たような人であった。言葉も少なかった。
 客もあったので、夫婦は長くも居なかった。小泉の兄の家へ帰ってから、三吉はこんな風に妻に尋ねてみた。
「どうだね、あの人達は」
「そうですね……」
 とお雪は返事に窮《こま》った。交際《つきあ》って見た上でなければ、彼女には何とも言ってみようが無かった。
 翌日《あくるひ》の午後、三吉達は
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