出来上るまで待つという約束で、其処を借りることに決めて来た。こんな話をして、それから三吉は思出したばかりでも汗の流れるという風に、
「家を探して歩くほど厭《いや》な気のするものは無いネ――加《おまけ》に、途中で、ヒドく雨に打たれて……」
と言って聞かせた。女子供には、東京へ出られるということが訳もなしに嬉しかったのである。
その晩、お房やお菊は寐《ね》る前に三吉の側へ来て戯れた。
「皆な温順《おとな》しくしていたかネ」と三吉が言った。「サ、二人ともそこへ並んで御覧」
二人の娘は喜びながら父の前に立った。
「いいかね。房ちゃんが一号で、菊ちゃんが二号で、繁ちゃんが三号だぜ」
「父さん、房ちゃんが一号?」と姉の方が聞いた。
「ああ、お前が一号で、菊ちゃんが二号だ。父さんが呼んだら、返事をするんだよ――そら、やるぜ」
娘達は嬉しそうに顔を見合せた。
「一号」
「ハイ」と妹の方が敏捷《すばしこ》く答えた。
「菊ちゃんが一号じゃ無いよ。房ちゃんが一号だよ」と姉は妹をつかまえて言った。
大騒ぎに成った。二人の娘は部屋中|躍《おど》って歩いた。
「へえ、繁ちゃんも種痘《ほうそう》がつきまし
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