とを家のものに話して聞かせなかった。末の子供は炬燵《こたつ》へ寄せて寝かしてあった。暦や錦絵を貼付《はりつ》けた古壁の側には、お房とお菊とがお手玉の音をさせながら遊んでいた。そこいらには、首のちぎれた人形も投出してあった。三吉は炬燵にあたりながら、姉妹の子供を眺めて、どうして自分の仕事を完成しよう、どうしてその間この子供等を養おうと思った。
お房は――三吉の母に肖《に》て――頬の紅い、快活な性質の娘であった。丁度牧野から子供へと言って貰って来た葡萄《ぶどう》ジャムの土産があった。それをお雪が取出した。お雪は雛《ひな》でも養うように、二人の子供を前に置いて、そのジャムを嘗《な》めさせるやら、菓子《かし》麺包《パン》につけて分けてくれるやらした。
三吉がどういう心の有様でいるか、何事《なんに》もそんなことは知らないから、お房は機嫌《きげん》よく父の傍へ来て、こんな歌を歌って聞かせた。
「兎《うさぎ》、兎、そなたの耳は
どうしてそう長いぞ――
おらが母の、若い時の名物で、
笹の葉ッ子|嚥《の》んだれば、
それで耳が長いぞ」
これはお雪が幼少《おさな》い時分に
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