お鶴などに見送られた。豊世は幾度か汽車の窓の下へ来て、涙ぐんだ眼で姑の方を見た。
十
一年余旅の状態《ありさま》を続けて、漸《ようや》くお種は弟の家まで辿《たど》り着いた。三吉は遠く名倉の家の方から帰って来て、お雪と共に姉を待受けているところで有った。
「オオ、橋本の姉さん――」
とお雪は台所から飛んで出て来て、襷《たすき》を除《はず》しながら迎えた。
奥の部屋へ案内されたお種の周囲《まわり》には、三吉夫婦を始め、子供等がめずらしそうに集った。お種は、狭隘《せせこま》しい都会の中央《まんなか》から、水車の音の聞えるような処へ移って、弟等と一緒に成れたことを喜んだ。彼女は別に汽車にも酔わなかったと言った。
「房《ふう》ちゃん、橋本の伯母さんだが、覚えているかい」と三吉は年長《うえ》の娘に尋た。
「一度汽車の窓で逢《あ》ったぎりじゃ、よく覚えが有るまいテ」と言って、お種はお房の顔を眺《なが》めて、「どうだ、伯母さんのような気がするか」
「皆な大きくなりましたろう」
「菊《きい》ちゃんの大きく成ったには魂消《たまげ》た。姉さんの方と幾許《いくら》も違わない」
お種
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