身《からだ》までその中へ巻込まれて行くような、可恐《おそろ》しい焦々《いらいら》した震え声と力とを出して形容した。
「ア――姉さんは未だ真実《ほんと》に癒《なお》っていないんだナ」
 と三吉は腹《おなか》の中で思った。それを側で聞くと、豊世も眠られなかった。


 再会を約して置て、翌朝《よくあさ》お種は三吉に別れた。豊世も姑と一緒にこの旅舎を出た。
「――三吉の家まで行って置けば、正太の許《ところ》から迎をよこしてくれるたって、造作なからず」
「ええ、三吉叔父さんの御宅までいらっしゃれば、もう郷里《くに》へ帰ったも同じようなものですわ」
 こんな言葉を換《かわ》しながら、姑と嫁とは宿の方へ帰って行った。
 例の二階で、復た復たお種が旅仕度を始める頃は、やがて八月の末であった。森彦の旅舎だの、直樹の家だの、方々へ暇乞《いとまご》いにも出掛けなければ成らぬ、と思うと、心はあわただしかった。
 ジメジメと蒸暑い午後、一番後廻しにした実の留守宅に暇乞に寄る積りで、お種は宿を出た。橋本へ嫁いてから以来《このかた》――指を折って数える程しか彼女は自分の生家《さと》へも帰っていない。その中で、小泉
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